Le chocolat dans la bouche - parler d'amour
肌の上を掠めるように辿る、ポルナレフの指先。
触れるか触れないかの微妙な動きは、くすぐったさから心地良さへと変わり、の脳へ快楽として伝えていく。
たくし上げられ、或いは引き下ろされ脱がされた服は、既に床へ落とされた。
晒された素肌に感じるのは、大分温んではきたがまだ冬の冷たさの残る三月の空気と、それよりもずっと熱い彼の体温。
熱を求めてその首を掻き抱けば、傍に寄った唇が、耳に密やかな笑い声を吹き込んだ。
「随分と甘えてくれるんだな?」
「っ……!」
低く僅かに掠れた、情欲の宿る声に、思わず息を詰める。
咄嗟に身を捩ったが、組み敷かれている上にポルナレフの膝が足の間に割り入れられている。
元の体格差もあり逃げるのも叶わず、顔を背けるのがせいぜいだった。
「いつもの控えめなのも良いが……」
「んっ」
「たまにゃあこういうのも悪くねえな」
顔を背けた為に上を向いた、耳の際にキスを落とされる。
そのままポルナレフの唇は首筋を辿り、鎖骨を過ぎて胸の膨らみへ。
片方の頂を口に含まれ、軽く吸われる。
「あ、っあ……!」
「今日のはいつもより甘い気がするぜ」
「んあっ!そこっ、喋らないで……!」
唇に食まれたままでいるせいで振動が直に伝わり、その刺激がの脳裏に火花を散らす。
もう片方の膨らみはポルナレフの手の平に包まれ、やわやわと揉みしだかれている。
突起を指の腹で押し潰し、軽く摘んで擦ってみたり。
そうして与えられる刺激は、疼くような痺れとなってを苛む。
彼から何度も与えられ、覚えてしまった快楽の波。
いつしか自ら望むようになったそれは、理性を少しずつ押し流していく。
薄く張った涙の膜に潤む視界の中、ポルナレフを探す。
胸元に埋められた彼の頬へ手を触れると、顔が上がり視線が絡む。
見えたのは熱に浮かされた瞳、浅く乱れた呼吸。
彼もまた自分と同じく、欲に飲まれつつあるのだ。
絡む視線が引き上げるように、ポルナレフの顔が近づいてくる。
「チョコ……」
「ん……?」
「食べたから、でしょ……わ、私が甘いの、って……」
「そうか……?それだけじゃあないと、思うんだがなあ……」
どちらともなく求め合い、言葉を唇の奥に封じる。
呼気も絡ませ、舌を食み、互いの口内を犯し合う。
そうしてが舌先に感じるのは仄かな甘み。
ポルナレフが言っていたのはこのことだろうか。
先程食べたチョコの甘さの裏に、彼が好んで吸う煙草の匂いがする。
ほら、やはりチョコレートの甘さだ。
熱に翻弄されて覚束ない思考力で、はようやくそれだけを思う。
その内に、ふと下腹部に違和感を覚え、思考が像を結んだ。
閉じる事を阻まれた足の間、己の最奥へと至る箇所。
そこに押し当てられた熱い感覚に、それが何であるかを知る。
「は、……このままでも十分、挿れられそうだ」
ひたりと宛がわれたものの先端でゆるゆると入口を撫でられると、ぬるりと滑る感触と共に電流のような痺れが背筋を駆け上る。
「……いいか?」
例の声で耳元で囁かれ、ひゅ、と喉が喘ぐ。
彼から与えられるあらゆる行為が、今や体の奥底に響いて狂おしい程に波を立てるのだ。
喘ぐ喉では言葉を紡ぐ前に、嬌声ばかりが飛び出してしまいそうになる。
だから代わりに、返事は行動で示すことにした。
おずおずと立てた膝でポルナレフの腰を挟み、自ら腰を揺らして彼の先端をゆるりと擦り上げる。
刺激に息を詰め、眉間を寄せる彼の首を抱き、ふっくらとした下唇を軽く食んで。
「……ジャン」
吐息混じりに名前を呼べば、一拍の間の後荒々しく掻き抱かれ。
そのまま深く貫かれた。
「ひぁ……ぁっ……!!」
呼吸すら忘れる程の衝撃に襲われ、一瞬の視界が白む。
望んでいたものとはいえ、強すぎる快楽は一息にを絶頂へと押し上げた。
束の間の浮遊感の後、視界がゆっくりと元に戻る。
首の辺りに感じるのは、肩口に顔を埋めたポルナレフが吐く熱い呼吸。
「お、ま……そういうの反則、だろ……」
「は……そく……?」
「そんな顔で、そんな風に名前呼ばれたら、加減なんて出来ねーぞ……」
怠そうに頭を持ち上げ、顔を覗き込んできたポルナレフが、の目尻から零れた涙を指で拭う。
普段よりも深い色を湛える、欲に濡れた勿忘草の瞳。
既にそんな余裕など失われているだろうに、それでもなお彼はを気遣おうとする。
そんな彼への愛しさが、欲に掻き乱された心にも確かなものとして降り積もっていく。
無意識に、体の中で未だ熱く脈打つ彼自身を締め付けてしまい、お互いにびくりと体を震わせた。
「っ、おい」
息を詰めたポルナレフから非難の声が上がる。
一旦離れようと身を引こうとするのへは追いすがり、その耳元へ唇を寄せ。
「……お好きにどうぞ?」
煽る事を見越した上で、ゆっくりと囁く。
元はホワイトデーにかこつけてこちらから仕掛けた事だ。
彼の全てを受け止める心構えなど、最初からとうに出来ている。
「……ったく、本当に今日は甘いな、」
ポルナレフの驚いた顔が、少し嬉しそうな苦笑へと変わっていく。
追いすがって浮いた頭を、再び柔らかな生地の上へと落とされて。
はポルナレフの腕に、力強くも優しく抱き締められた。
ホワイトデーいちゃいちゃ夢の続きでした。
にゃんにゃんしてもらう事だけが目的だったんでブレッブレ感半端ないですがこれが私の精一杯の裏です。
ここまで読んで下さった方がいたらありがとうございました……!!
例により仏語の正否は知らんのですが、最初「睦言」の仏語訳をサブタイトルにしようと翻訳かけたら
「Mutsugoto」ってそのまんまを外国語発音されたので膝から崩れ落ちました。
面白かったです。
戯
2014.3.25
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