来訪










「…ようやく着いた……」


 どんと立ちはだかる門を前に、ついそんな言葉が口を突いて出て来た。

着いたといっても、門はまだ開いてもいないし、
開いたとしてもその後には問題が山積みの筈だ。

それでも、ここに無事辿り着けた事だけでも、感慨深いものを覚えずにはいられなかった。


ぼんやりと門を眺めていると、くいくいと袖を引っ張られる。
はっとして、引かれた袖の方を見る。


「あにさま、どうしたの?」
「…ううん、何でもないよ。ごめんね、つい嬉しくなっちゃって」


子供が、不安そうな顔でこちらを見上げていた。

ぼんやりしてしまっていた事を取り繕うように、子供に笑いかけてその頭を撫でた。
それだけで、子供から不安そうな表情がたちまちに消える。
はにかむように笑う子供の姿を、目を細めて眺めた。

そうだ、こんな所で立ち止まってる時間なんて無い。

この子の為に、自分が今、動かなければいけないんだ。


景気よく、両手で自分の頬をはたいて気合いを入れる。


「よしっ、あにさま頑張るよ!」
「うん、がんばってー!」


無邪気に応援してくれる子供の手を左に。
旅の荷物は右にそれぞれ持ち。

大きく息を吸い込む。


「すいませーーーん!!」


力の限り張った声は、広大な敷地に溶け広がっていく。


「子供」と「あにさま」。
二人が前にして立つ門の横。

門柱にかけられた看板には、立派な書体でしたためられた『忍術学園』の文字。


誰かが来るまでの間、その文字は「あにさま」を静かに緊張させていった。




















や っ ち ま っ た 。
と、言わざるを得ない。
小学生時代から単行本買い続けて、今更萌え的な意味でハマッた戯が落乱夢をお届けしますよ!

落乱夢は他の連載とはちょいと雰囲気を異にしてみようかなと目論んでおります。
文体がまるで変わらんのは悲しむべき所ですね。
とりあえず今予定してる絡みは六年生のみ。
行き当たりばったりでお送りします。



2009.12.5
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