食堂
「はい、Aランチお待ちどおさま!」
注文して程なく差し出されたAランチを前に、立花仙蔵は目を一つ瞬いた。
ランチ自体は、食堂のおばちゃんが作るいつもの美味しい料理。
けれど、ランチを差し出す人が、いつもとは違った。
食堂のおばちゃんでも、まして食堂に手伝いに来た学園の生徒でもない。
これは誰だ?
ランチを受け取っても席に行こうとしない仙蔵に、その人はちょっと困ったように首を傾げた。
「…食べないの?昼休み短くなっちゃうよ?」
「ああ。…見ない顔だな」
「…ああ」
問いを口にされてようやく、仙蔵が立ち止まった理由に思い至ったらしい。
ぽんと手を打って、その人は緊張感のない笑顔を浮かべて見せた。
「今日から忍術学園で働く事になった、新入職員のでっす」
よろしくー。
言いながら、指二本立てた手を顔の横に持ってくる。
この人の決めポーズだろうか。
今日入ったばかりの職員なら、見ない顔なのも納得がいった。
少し、面白い奴かも知れない。
「食堂の手伝いが仕事なのか?」
「んー、色んな所の仕事を手伝わせて貰って、その後で正式配属を決めるみたい」
「なるほど。で、今日は食堂ということか」
「そそ」
興味が湧き、話をしてみると、随分と気さくな奴だった。
始終にこにこしているし、人当たりも良い。
忍術学園の職員として働くなら、少し気が緩みすぎている気がしないでもないが。
それを言うなら、事務の小松田秀作の例もある。
多分、何とかなるだろう、と思う。
初対面での印象は、格別に悪いものもない。
ここでの勤務が長く続くよう、応援してやろうという気にもなる。
その応援の気持ちを表す、最初の一歩。
「頑張れよ」
言葉と共に、指二本立てた手を顔の横へ。
さっき相手がしてみせたのと同じポーズを返した。
やってみると少し恥ずかしい。
その恥ずかしさの代わりに返ってきたのは、
「ありがとう!超頑張る!!」
非の打ち所のない、本当に嬉しそうな、満面の笑み。
食事を平らげるまでの間、視界にちらちらと新入職員のの姿が映り込む。
カウンターを出たり入ったり、忙しなく働くその姿。
その表情の明るい事といったら。
見ているこちらまで、つられて笑顔が出てしまうほど、楽しげなものだった。
落乱夢その2。
立花先輩好きすぎて困る。…が、その愛が上手く伝えられない。
…文でキャラクター書き分けられないよ!!
ワタクシの代わりに皆様の愛でその辺はカバーしていただきたいです。
戯
2009.12.13
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